ご年配の方の骨折について:大腿骨骨折と骨粗しょう症との関連を中心に

令和6年10月にお住まいで転ばれ右大腿骨近位部骨折(報道では「大腿骨上部」=太ももの付け根の辺りの骨折です)を負われ手術を受けられた、美智子上皇后様のことは私たちの記憶に新しいことだと思います。

このいわゆる太ももの骨の付け根(大腿骨近位部)に加えて、手首(橈骨遠位端)、背骨(胸椎、腰椎)や腕の付け根(上腕骨近位部)は、ご年配の方に多い4大骨折の部位とされています。

骨盤部の模型です(前から見たところ)

左の股関節(太ももの付け根)アップ

大腿骨近位部はこの範囲です

 

若い世代の方が、立っている状態から転んで手をつく尻餅をつくなどしてそれらの骨折まで負うことは比較的少ないと思いますが、ご年配の方の場合は、立っている状態また座っている状態から転んでも、またときには背骨などは原因がはっきりせずに、骨折を負うこともしばしば見られます。

ご年配の方がこれらの骨折を負う原因は「骨粗しょう症」と「転倒のしやすさ」の二つとされています。

骨折の予防には、骨を丈夫に保つことが大事であること、また歳を重ねて骨が弱る原因として骨粗しょう症が挙げられることは多くの方がご存知と思います。

骨の強さを表す指標の一つに「骨密度」があります。

この骨密度を測る方法ですが、放射線を使わないため催しものや健診会場など場所を問わず行える、器械に足を乗せてかかとの骨に超音波を当てて調べる簡易な方法もありますが、精度が高く正式な方法とされているのは「DEXA(デキサ)」と呼ばれる、ヒトのからだで一番太くてなおかつ骨粗しょう症で骨折しやすい腰椎と大腿骨近位部を放射線を用いて測る方法です。

腰の背骨(腰痛)正面です。5個あります

腰椎を横から見たところです

 

こうして調べた骨密度が一定以上低下している、もしくはこの背骨(胸椎、腰椎)や太ももの骨の付け根(大腿骨近位部)といった箇所を今までに骨折したことがあるなどの条件で、骨粗しょう症と診断されます。

骨は、古い骨を壊す「破骨細胞」と壊れたところに新たな骨を作る「骨芽細胞」が互いにバランスよく働いて数ヶ月毎に再構成されています。骨のこのサイクルを「骨代謝」といいます。

女性の場合、女性ホルモンのエストロゲンが破骨細胞と骨芽細胞のバランス維持の役目をしているのですが、閉経後に女性ホルモンのエストロゲンが減少すると破骨細胞の働きを抑えられなくなり骨粗しょう症に傾きやすいとされています。

男性の場合は、男性ホルモンのアンドロゲンも破骨細胞と骨芽細胞のバランスに関わっていますが、女性の閉経のようなホルモン量が急に減少するはっきりした節目が無いためわかりにくいのですが、決して油断はできません。

男性特有というわけではありませんが、タバコの喫煙や飲酒の多い方は、小腸からのカルシウムの吸収を妨げる原因となり要注意です。

また骨粗しょう症は体格と相関関係があるとされ、筋肉のある方が有利とされているのはなんとなくご理解いただけるかと思いますが、皮下脂肪がある事で骨を増やす作用があるとも言われており、適度にぽっちゃり体型が望ましいとされています。

(後編は自分でできる骨粗しょう症対策から述べます)