後編
さて自分でできる骨粗しょう症対策です。
みなさんがすぐ思いつくのは、カルシウムを摂ることだと思いますが、それ以上に意識するべきはビタミンDです。
ビタミンDは小腸からカルシウムを吸収するのに関わっています。
骨粗しょう症患者さんの血液検査でこのビタミンDを測ると、正常範囲内に達していない方は本当に多いです。公的な研究調査では対象者の90%以上の人がビタミンD不足との報告も有ります。
このビタミンDは、食品では鮭やさんま、しいたけやまいたけに多く含まれるとされていますが、厚生労働省の定める一日に摂るべきビタミンDの量を食品だけで摂るのは至難の業なのです。
このビタミンDは他のビタミンと違い、日光が皮膚にあたることで体内で作られるとされており、1日に二、三十分でも買い物や家事などの目的でも良いので外出して日光に当たる習慣をつけるとよいでしょう。
ただ日光浴も季節によっては充分できません(冬は服で皮膚は隠れがち、夏は熱中症の恐れがありますので…)
一定以上の年齢となられ、食も細りがちだなと自覚のあるような方なら、なにかと普段の生活習慣の見直しだけでは増やしづらいビタミンDは、市販のサプリメントを摂ることもご検討されてはと思います。
ビタミンD以外で骨を強くする方法としては、骨に刺激を与える事です。
さまざまな原因で寝たきりとなられた方の、骨のレントゲンを撮らせていただくことがありますが、そうした方々はレントゲン写真上骨が薄くなっていて、骨密度がかなり低下しておられるのではと予想される方がおられます。
逆に言うと、私たちは日頃体重をかけて歩き動くことで、骨は刺激を受け骨の強さの維持に繋がっているのです。
骨に刺激を、ですが、歩く生活が出来る方なら歩く機会を増やす、お勤めしている方なら通勤経路の工夫、家での生活がメインの方なら生活の中にウォーキングの時間を取り入れるとか。
健康上その他の理由で歩くことがままならない方なら、つかまり立ちからかかとを浮かしてはトンと下ろすその繰り返しだけでも脚をはじめ全身の骨に刺激を与えるのに繋がりますよ。
このウォーキングは足腰の筋肉をつけるのにも結びつき、前に挙げた骨折を負いやすくなるもう一つの原因「転倒のしやすさ」の予防にもなります。
今までの生活でほとんど歩く機会の無かった方は短い時間から、歩く機会のある方は今より少しずつ時間や距離そしてアップダウンの負荷などをちょっとずつ増やしてはいかがでしょうか。
また膝の痛みや内臓の病気などで歩き回れない方は、通販番組でよく見かけるステッパーで脚を踏み込む運動だけでも取り入れてはいかがでしょうか。(通販番組でも言われてますが、立って踏み込むのがしんどい方は座って脚で踏み込む運動するだけでも全然違いますよ!)
ステッパーの一例(当院所有) 通販でお馴染みの草笛光子さんご愛用のでもいいと思いますよ
逆にウォーキングだけでは物足りない方は、スクワット特に膝を曲げるのを90度にとどめておくハーフスクワットが膝の負担も少なめでお勧めです。(ふらつき感のある方は腰の高さのテーブルサイドで天板の縁を持って行って下さい。)
スクワット姿 著作権フリー画像なのでやや屁っ放り腰気味かな…
10回1セットで、出来れば朝と晩に1セットずつ、合計20回が毎日出来れば、きっといいことありますよ。
また先のビタミンDですが、骨粗しょう症の治療ばかりでなく、摂ることで筋力がつきひいては転倒の予防効果が有意にあることが研究でわかっており、こちらの観点からもビタミンDを摂ることお勧めです。
大腿骨近位部骨折を来した方のその後の生命予後は顕著に悪化するということが今日の研究調査ではわかっています。骨折を負うことで死亡リスクが高まり、本来見込まれた寿命まで生きられないというのです。
この死亡リスクを少しでも減らすために、こうした骨折患者さんを受け入れられている病院では、昨今は出来る限り早い時期、入院当日や次の日には手術を行う体制の病院が増えています。
そして術後早期からリハビリをはじめていただき、床ずれ(褥瘡)や関節が硬くなったり(拘縮)することを防ぎ、出来る限り骨折前のような歩行も含めた日常生活動作が取り戻せるよう多くの病院では努めています。
それでも元の生活動作まで回復できなくなる方も何割かはおられるのです。
ですから、こうした骨折にあわないよう日頃の自身での対策が肝心だと思います。
「骨粗しょう症」と「転倒のしやすさ」の二つへの対応、ぜひ心掛けてみてくださいね。