先日漢方薬治療を積極的に取り入れておられる先生の講義を聞いていて、外傷(ケガ)への対応のお話の際に、外傷の初期対応の原則は昔はRICEだったけど今はPEACE&LOVEなんですと伺いました。
御恥ずかしながら初耳の話で、(Love&Peaceならまあ聞く言葉だが、PEACE&LOVE??ナニナニ…)状態
RICEとは以前提唱されていた、外傷直後にすべき初期対応の英語の頭文字を並べたもので
1. Rest(安静)
ケガをしたら、まずは安静に保つことが大切ということで、全身的にむやみに動かさないとか、腕や脚の患部にタオルや添え木などを当てて固定することを指します。
2. Icing(冷却、アイシング)
患部に氷のうなどを当てて体温を下げることで、患部の毛細血管が収縮して、腫れや内出血、痛みなどが抑えられるとされていました。
3. Compression(圧迫)
患部にテープなどを巻いて圧迫し、腫れや内出血を最小限に抑えます。
4. Elevation(挙上)
患部を心臓より高い位置に保ちます。(肘より先のケガなら肘を曲げておく。脚のケガなら安静時は布団など重ねた上に患部を乗せておく)血液が心臓に向かって流れることで内出血による腫れをできるだけ減らします。
です。
それに対しPEACE&LOVEとは
まずケガの直後、初日(急性期)に行うべきことがPEACE
PROTECTION(保護)
外傷後の数日間は痛みを伴う活動や運動を避けてください。
ELEVATION(挙上)
ケガをした部位をできるだけ頻繁に心臓よりも高く挙上します。
AVOID ANTI-INFLAMMATORIES(抗炎症薬を避ける)
ケガをした組織の回復を低下させる可能性があるため抗炎症薬の服用は避けてください。
またアイシングも避けてください。
COMPRESSION(圧迫)
弾性包帯などを使用して腫れを抑えます。
EDUCATION (教育)
患者の状態に最も適した対処法を教え、過剰な医学的診察と薬の服用、そして不必要な受動的療法を避けるようにします。
後半のLOVEはケガから数日以降(亜急性期)に行うべきこととして
LOAD(負荷)
痛みと相談しながら徐々に日常生活に戻るようにしましょう。 いつ負荷を上げていけば良いのかは体が教えてくれます。
OPTIMISM(楽観思考)
自信を持ち、前向きな考えを持つことで最適な回復が可能になります。そのためにもポジティブ思考に切り替えることが重要です。
VASCULARISATION(血流を増やす)
痛みが伴わない有酸素運動を行うことで、負傷組織への血流を増やし回復を促進させます。
EXERCISE(運動)
回復へ向けた積極的なアプローチを取ることで、体の動き、筋力、自己受容性感覚を回復させます。
内容的に従来から変更した重要ポイント三つ
第一はきょうび一般的にもよく周知されている患部を冷やす行為(アイシング)が、患部の(溜まった内出血の血液をまわりに流す、逃がす)血流の悪化につながる→うっ血を減らしたり炎症を鎮める妨げになるとして、推奨される外傷の初期対応から外れた点。
第二はまたお薬関連では、ほぼ必ずと言っていいくらい医療機関で処方される事の多い痛み止め(消炎鎮痛剤)が、自然に患部の炎症を鎮めようとするからだ自らの反応の妨げになるとして勧められないとはっきり明示された事で、こちらはお薬を処方する立場としてけっこう考えるものがあります。
第三は、急性期を過ぎた後の対応について、拘縮など機能障害残存につながる合併症の予防で不必要な安静の継続をたしなめるべく、時期がきたら使用再開を促す内容が追加されてます。また気持ちの切り替えについても言及しています。
また
患部の圧迫(患部が内出血で過度に腫れることで、患部や患部より先の血行障害で引き起こされる二次障害、例えば患部の真上に皮膚の水ぶくれができたり末梢が壊死したりとかをできるだけ減らす為)
や
これは従来から整形外科受診するとまず言われることですが、患部の腫れの予防と軽減のためにできるだけ高く上げておく事(我々は患肢挙上と呼び、入院・手術となるようなケガの方には必ず指示させてもらう事です)
は合併症をできるだけ予防するために、引き続き推奨されています。
ご参考にしてみて下さいね。
(ご注意を!!: 以上の処置は外傷・ケガの一般的に推奨される初期対応であり、特にLOVE対応は、患部が軽い打撲などと確認できて、なおかつ急性期を脱してから行うことです。軽いケガだと思っていても骨にヒビが入っているという場合もありますので、ケガをしたらまずは医療機関を尋ねて診ていただくことをお勧めします。)
参考文献
“Soft- tissue injuries simply need PEACE
and LOVE”
Dubois B, Esculier J-F, Br J Sports Med January 2020 Vol 54 No 2(インターネット検索で原文を読めます)